【この記事の結論】
・派遣の額面月収から手取りを概算する際は、額面金額の75%から85%を目安として計算します。
・2026年度の健康保険料率は自治体で異なり、子ども・子育て支援金が新たに上乗せされます。
・手取り25万円を派遣で実現するには、1日8時間勤務で時給1,900円前後が必要となります。
・時給制の派遣では祝日や欠勤により勤務日数が減ると、その月の給料が直接減少してしまいます。
・手取りを増やすためには、契約更新の1か月前を目安に実績と相場を材料にして時給交渉を行います。
派遣の求人票に並ぶ「時給1,700円」という数字は、そのまま口座へ振り込まれる金額ではありません。社会保険料や税金が引かれた後にいくら残るのかがつかめず、応募や引っ越し、家計の見直しに踏み切れないまま求人を眺めている方も多いのではないでしょうか。
はじめての給与明細を見て「思っていたより少ない」と感じた経験がある方や、月によって振込額が変わる理由がわからず不安を抱えている方もいるはずです。
しかも保険料率や税制は毎年見直されるため、数年前に調べた知識のままでは、いまの手取りとずれてしまいます。
本記事では、時給から額面月収と手取りを計算する手順、給料から引かれるお金の内訳、時給・月収別の手取り早見表、手取り25万円・30万円に必要な時給の逆算、さらに給料計算サイトの使い方や手取りを増やす方法までわかりやすく解説します。
目次
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1.派遣の給料と手取りの計算方法
この章では、額面と手取りの違いを整理したうえで、時給から額面月収を求め、額面から手取りを計算するまでの基本の流れを順に説明します。
額面と手取りの違い
額面は時給×労働時間で計算した総支給額、手取りはそこから社会保険料と税金を引いて実際に振り込まれる金額です。求人票の時給や月収例は額面で書かれており、手取りの目安は額面の75〜85%程度ですが、扶養人数や住民税、年齢などで変わります。
たとえば額面25万円なら振込は20万円前後と考えておくと、生活費の計画を立てやすくなります。なお、転職活動や各種の審査で年収を聞かれたときは、額面で答えるのが一般的です。
時給から額面月収を計算する
額面月収は「時給×1日の実働時間×月の勤務日数」で計算でき、時給1,700円・実働8時間・月21日なら285,600円です。実働時間に無給の休憩は含めないため、9時〜18時で休憩1時間の勤務なら8時間で計算します。
法定労働時間を超える残業には25%以上(月60時間超は50%以上)の割増賃金が付き、時給1,700円なら残業1時間あたり2,125円以上です。
勤務日数は祝日の数で毎月変わるため、年間をならした21日前後で見積もると収入のぶれを想定しやすくなります。
額面から手取りを計算する
手取りは「額面−社会保険料−所得税−住民税」で計算し、ざっくり見積もる場合は額面に0.75〜0.85を掛けます。
社会保険料は額面の15%前後、所得税と住民税は合わせて5%前後が目安で、額面28万円なら28万円×0.8で手取り約22万円という概算です。注意したいのは住民税の払い方で、派遣労働者を含む給与所得者は原則として給与から天引きする特別徴収になります。
例外的に普通徴収となる場合は、振込額が多く見えても、後から住民税を納める分を残しておきましょう。
2.派遣の給料から引かれるもの
この章では、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料と、所得税・住民税について、2026年度の料率と金額の目安を説明します。
健康保険料と子ども・子育て支援金
健康保険料は、給料を一定の幅で区分した「標準報酬月額」に都道府県ごとの料率を掛け、会社と半分ずつ負担します。
協会けんぽの2026年度(令和8年度)の料率は東京都で9.85%、本人負担はその半分の4.925%で、標準報酬月額28万円なら月13,790円です。
さらに2026年4月分(5月納付分)からは子ども・子育て支援金0.23%(本人負担0.115%)の上乗せが始まり、同じ例で月322円が加わりました。料率は都道府県で異なり、毎年見直されます。
厚生年金保険料
毎月の給料から最も大きく引かれるのが厚生年金保険料で、料率は18.3%に固定され、本人は半分の9.15%を負担します。計算のもとになるのは給料を一定の幅で区分した標準報酬月額で、28万円の人なら月25,620円です。
手取りが減る主因になっている一方、納めた分は国民年金に上乗せされる将来の年金額に反映されます。保険料の半分を派遣会社が負担してくれる点は、国民年金だけに加入する働き方にはないメリットです。
雇用保険料
雇用保険料の本人負担は、2026年4月から一般の事業で0.5%となり、前年度より0.05ポイント下がりました。ほかの社会保険料と違い、交通費を含む賃金総額に料率を掛けるのが特徴で、月285,600円なら1,428円です。
金額は小さいものの、失業したときの基本手当や育児休業給付、教育訓練給付の財源になっています。週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある人は原則として加入し、派遣で契約が途切れた場合の備えとして役割の大きい保険料です。
所得税
給料から社会保険料を引いた残りの金額に応じて、所得税と復興特別所得税が毎月「源泉徴収」の形で天引きされます。派遣会社に「扶養控除等申告書」を提出すると税額表の低い区分(甲欄)が適用され、月々の天引きを抑えられる仕組みです。
扶養親族等なしで社会保険料控除後の給与が24万円台なら、2026年分の月額表では月4,000円台後半が目安になります。毎月の天引きは仮の金額で、年末調整で年間税額との差額が精算されます。
なお、2025年分からは基礎控除などが見直されました。
住民税
住民税は前年1月〜12月の所得に対して課税され、一般に税率10%の所得割と年4,000円の均等割で構成されます。これとは別に、2024年度からは森林環境税1,000円も個人住民税と併せて徴収される仕組みです。
派遣労働者を含む給与所得者は原則として給与天引き(特別徴収)となり、6月から翌年5月まで毎月納めます。普通徴収の場合は、自治体から届く納付書で通常年4回に分けて納付します。
前年に課税対象となる所得がなければ、原則として働き始めた年の住民税はかかりません。
40歳からの介護保険料
40歳になると介護保険の第2号被保険者となり、健康保険料に介護保険料が上乗せされて手取りが減ります。協会けんぽの2026年度の介護保険料率は全国一律1.62%で、本人負担は半分の0.81%、標準報酬月額28万円なら月2,268円です。
徴収が始まるのは40歳の誕生日の前日が属する月の分からで、誕生日が1日の人は前月分から対象になる点に注意が必要です。65歳以降は市区町村が介護保険料を徴収し、受給額などの条件を満たす人は原則として年金からの特別徴収となります。
3.時給・月収別の手取り早見表
この章では、時給1,700円や額面月収25万円・30万円の手取りと、最新の平均時給から見た目安を、東京都の料率による概算で紹介します。
時給1,700円の手取り
時給1,700円で1日8時間・月21日働くと額面は285,600円、手取りの目安は約22万8,000円です。
東京都・協会けんぽ・40歳未満・扶養親族等なしで、前年も同程度の収入があり住民税が特別徴収される前提の概算を示します。
項目 | 金額の目安 |
|---|---|
額面月収 | 285,600円 |
社会保険料 | 約41,200円 |
所得税 | 約5,000円 |
住民税 | 約11,800円 |
手取り | 約227,600円 |
住民税を納付書で別に払う場合、振込額は約23万9,000円に増えますが、そこから住民税を納めるため手元に残る金額は変わりません。時給が100円上がると、手取りはおおむね月1万3,000円前後増える計算です。
額面月収25万円の手取り
社会保険料と税金を引くと、額面月収25万円の手取りは約19万8,000円で、額面の約79%が残る計算です。
東京都・協会けんぽ・40歳未満・扶養親族等なしで、前年も同程度の収入がある前提の概算では、社会保険料が約38,100円、所得税が約4,000円、住民税が約9,600円になります。時給に直すと、1日8時間・月21日勤務で約1,490円に相当する水準です。
住民税を自分で納める方式なら振込額は約20万8,000円になるため、納付分を取り分けて管理しておくと後で慌てずに済みます。
額面月収30万円の手取り
額面月収30万円の手取りは約23万8,000円が目安で、時給1,800円・1日8時間・月21日の勤務がほぼこの水準です。
東京都・協会けんぽ・40歳未満・扶養親族等なしで、前年も同程度の収入がある前提では、社会保険料が約44,100円、所得税が約5,300円、住民税が約12,600円引かれます。額面が25万円から30万円へ5万円増えても、手取りの増加は約4万円です。
収入に応じて税や保険料も増えるため、生活費や貯蓄は手取りベースで計画しましょう。
平均賃金から見る手取り目安
2026年6月時点の民間調査では、三大都市圏の派遣の募集時平均時給は1,650円〜1,720円です。平均時給で1日8時間・月21日のフルタイム勤務をすると、額面は約28万〜29万円、手取りは約22万〜23万円になります。
4.手取り25万円・30万円に必要な時給
この章では、手取り25万円・30万円を実現するために必要な額面月収と時給の目安を、フルタイム勤務を前提とした逆算で紹介します。
手取り25万円に必要な時給
手取り25万円を目指す場合は額面で約32万円が必要となり、1日8時間・月21日勤務なら時給1,900円前後が目安です。手取りが額面の約8割になる関係から、25万円÷0.8で額面約31万〜32万円と逆算できます。
時給1,900円は三大都市圏の平均よりやや高いものの、経理や貿易事務などの経験を生かせる職種やIT関連では狙える水準です。ただし、時給1,800円で月22日働いても額面は31万6,800円のため、手取り25万円に届くかは住民税や扶養人数、残業時間で変わります。
手取り30万円に必要な時給
手取り30万円には額面で約38万円が必要で、1日8時間・月21日のフルタイム勤務なら時給2,300円前後が目安です。ITエンジニア系や語学を使う専門職では、現実的な水準といえます。
事務系の平均約1,700円では時給だけで届かせるのが難しく、時給2,000円の場合は額面33万6,000円で、38万円へ近づけるには25%割増で18時間の時間外労働が必要です。
手取りは控除条件で変わるため、専門スキルの習得や職種転換を含む中期的なキャリア計画として考えましょう。
5.給料計算サイト・アプリの使い方
この章では、給料計算サイトやアプリで派遣の手取りを調べるときに、入力条件の設定、計算年と控除項目、結果の確かめ方で注意したい点を解説します。
勤務条件を正確に入力する
計算ツールは入力条件をそのまま使うため、実態と違う数字を入れると手取りの目安も大きくずれます。
とくに次の3点を確認しましょう。
実働時間は、休憩1時間を除いた8時間などの実際に働く時間を入力する
勤務日数は、初期設定の20日のままにせず契約に沿った日数へ直す
交通費が時給と別に支給される場合は、専用の欄へ分けて入力する
残業分も月収に含め、深夜勤務がある場合は通常時給に25%以上の深夜割増を加えると、実際の給料との差を小さくできます。
計算年と控除項目を確認する
社会保険料率や税制は毎年変わるため、ツールが2026年の条件に対応しているかを最初に確認します。2026年は、健康保険・介護保険・雇用保険の料率改定に加えて、4月分(5月納付分)から子ども・子育て支援金の上乗せが始まった年です。
古い年の設定で計算すると、月数百円〜数千円の差が出ることがあります。あわせて、保険料や源泉所得税の計算に影響する健康保険の支部、年齢、扶養親族等の人数の設定も見直しましょう。
計算結果を給与明細と照合する
シミュレーションは概算にすぎないため、働き始めたら最初の給与明細と項目ごとに照合しましょう。健康保険・厚生年金・雇用保険・所得税をそれぞれ見比べると、想定と違う箇所が理解できます。
社会保険の加入手続きのタイミングや標準報酬月額の決まり方により、初月は差が出やすいです。大きなずれが明らかにある場合は、派遣会社の担当窓口へ問い合わせましょう。
明細は時給交渉や確定申告時の確認資料にもなるため、保管しておくと役立ちます。
6.派遣の手取りが少ない理由
この章では、派遣の給料の手取りが想定より少なくなりやすい原因を、勤務日数、住民税、保険料、交通費の4つの観点から解説します。
祝日や欠勤で勤務日数が減る
時給制の派遣は原則として実際に働いた時間に応じた支払いのため、祝日や欠勤で勤務日数が減ると、その月の給料が直接減ります。
ゴールデンウィークや年末年始のある月は営業日が18日前後まで減ることがあり、時給1,700円・8時間勤務なら20日の月と比べて約2万7,000円の差が出ます。これは月給制の働き方にはない収入のぶれ方です。
条件を満たすと年次有給休暇を利用でき、業務外の病気やけがで連続3日を含む4日以上休む場合などは傷病手当金の対象になり得るため、派遣会社へ確認しておきましょう。
住民税は前年の所得で決まる
住民税は前年の所得で計算されるため、今の収入が下がっても、前年の収入が多かった場合は税額が高いままです。正社員から派遣へ切り替えた1年目や、産休・育休明けに復帰した年は、収入と税額のバランスが崩れやすい時期といえます。
派遣労働者を含む給与所得者は原則として特別徴収で、6月から翌年5月まで毎月の給与から天引きされます。普通徴収となった場合は通常年4回払いになり、1回あたりの金額が大きく見えることも負担感の一因です。
税額通知を確認し、月割り相当額を取り分けておくと支払いが楽になります。
保険料は年齢や地域で変わる
同じ額面でも、年齢や加入する協会けんぽ支部によって保険料が変わり、手取りに月数千円の差が生じます。40歳になると介護保険料(協会けんぽで本人負担0.81%)が加わり、標準報酬月額28万円なら手取りは月2,268円減ります。
2026年度の健康保険料率は、協会けんぽで最も低い新潟県の9.21%から最も高い佐賀県の10.55%まで開きがあります。昇給などで固定的賃金が変動し、一定の条件で標準報酬月額の区分が上がると、その後の保険料も増えます。
交通費の支給条件を見落としている
交通費に上限があったり時給に含まれていたりすると、通勤にかかる実費との差額が自己負担になって手取りを圧迫します。
2020年施行の派遣労働者の同一労働同一賃金により、通勤手当を含む不合理な待遇差の解消が求められていますが、支給方法や上限は契約により異なります。
電車やバスの交通費は、経済的かつ合理的な経路による額の場合、月15万円まで所得税がかからない一方、社会保険料の計算には含まれるため、支給額がそのまま得になるわけではありません。
契約前に支給条件と通勤経路の実費を見比べておきましょう。
7.派遣の手取りを増やす方法
この章では、求人の比べ方、派遣会社への時給交渉、年末調整と税控除の見直しという3つの面から、手取りを増やす方法を紹介します。
時給と交通費をセットで比べる
求人を比べるときは時給の高さだけで選ばず、「時給×実働時間+交通費−通勤の実費」で手元に残る金額を並べましょう。交通費が全額支給の求人と上限ありの求人では、時給が同じでも月数千円の差が付くことがあります。
また、公共交通機関の交通費経済的かつ合理的な経路による月15万円まで所得税が非課税のため、同じ支給総額なら課税される時給への上乗せより税金の面で有利です。ただし、通勤手当も原則として社会保険の報酬に含まれます。
勤務地が近く通勤費がほとんどかからない求人も、実質的な手取りでは高時給の求人に匹敵する場合があります。
派遣会社へ時給を相談する
時給の交渉相手は、派遣先ではなく雇用主である派遣会社です。契約更新の1か月ほど前に相談すると、次の契約条件に反映してもらいやすくなります。
求人サイトで同じ職種の募集時給を調べ、自分の契約時給より高い水準が並んでいれば、それだけで説得力のある材料になります。
担当業務の広がりや派遣先からの評価も具体的に伝えましょう。時給が50円上がるだけで、8時間×21日勤務なら額面で月8,400円、年間で約10万円の差が出ます。感情的な要求ではなく、実績と相場を材料にした相談を心がけましょう。
年末調整と税控除を確認する
生命保険料控除やiDeCoの掛金などは、必要書類を派遣会社へ提出して年末調整で申告できます。医療費控除は確定申告、ふるさと納税は確定申告または条件を満たす場合のワンストップ特例で手続きできます。
2025年分から基礎控除と給与所得控除が見直され、給与収入だけで合計所得金額などの要件を満たす場合、所得税がかからない年収の目安は160万円となりました。ただし、これは所得税の基準で、社会保険の加入基準とは別です。
扶養の範囲で働く人は両方を確認し、期限内に書類を提出しましょう。
8.派遣の給料と手取りに関するよくある質問
この章では、派遣の給料と手取りをめぐって特に質問の多い、派遣会社のマージンが給料から引かれているのかという疑問に答えます。
派遣会社のマージンは給料から差し引かれる?
マージンは、派遣先が派遣会社へ支払う派遣料金と派遣労働者の賃金との差額のことで、給料から差し引かれるものではありません。給与明細に「マージン」という控除項目が載ることはなく、手取りの計算にも影響しない仕組みです。
差額の中身には、派遣会社が負担する社会保険料や有給休暇の費用、教育訓練費などが含まれており、全部が会社のもうけになるわけではありません。
労働者派遣法によりマージン率などの情報提供が義務付けられているため、登録前に各社のサイトなどで確認できます。
9.まとめ
本記事では、派遣の給料から手取りを計算する手順や給料から引かれるお金の内訳、時給・月収別の手取り早見表、手取り25万円・30万円に必要な時給の逆算までを解説しました。
まずは自分の時給と実働時間、勤務日数から額面を出し、額面のおよそ75〜85%を目安に手取りを見積もってみてください。より正確に把握したい場合は、2026年度の料率に対応した計算ツールを使い、最初の給与明細と照らし合わせると良いでしょう。
求人選びや時給交渉、生活設計の判断は、額面ではなく手取りを基準にすると迷いが減ります。まずは自分の条件で数字を出すところから始めてみてはいかがでしょうか。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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