【この記事の結論】
・契約更新を辞退する際は契約書で申出期限を確認し満了の1か月前を目安に意思を伝えます。
・引き止めを防ぐため更新辞退の理由は一身上の都合など簡潔に伝え角を立てないことが大切です。
・派遣スタッフが更新を断る場合は派遣先ではなく雇用主である派遣会社の担当者へ先に連絡します。
・会社から雇止めを告げられて納得できない時は雇止め理由証明書を請求し労働局へ相談できます。
・契約満了前であっても要件を満たしていれば残っている年次有給休暇を消化する権利があります。
次の契約は更新しないと決めたものの、どう切り出せばよいか分からず、更新時期が近づくほど気が重くなっている方は多いのではないでしょうか。契約社員やパート、派遣スタッフとして働いていれば、誰でも一度は直面しうる場面です。
「引き止められたら断り切れないかもしれない」「伝えるタイミングを間違えて気まずくなりたくない」と不安を感じている方も多いはずです。実際、伝え方や時期を誤ると、引き止めが長引いたり、失業保険の手続きで不利になったりすることもあります。
本記事では、契約更新しないときの伝え方について、自分から断る場合と会社側が通知する場合の両面から、口頭・メール・派遣会社向けの例文、契約満了までの手続き、会社から更新しないと言われたときの対処までわかりやすく解説します。
目次
閉じる
1.契約更新しないと伝える前の確認
この章では、契約更新を断る前に押さえておきたい、契約満了と期間途中の終了の違い、契約書の更新条件や申出期限の確認方法を解説します。
契約満了と期間途中の終了の違い
契約満了に合わせて更新しない場合は期間の終了で雇用が終わり、途中で辞める退職とは法的な扱いが異なります。
期間途中の終了には労働者側でも原則として民法第628条の「やむを得ない事由」が必要で、使用者側の途中解雇も労働契約法第17条で厳しく制限されます。ただし、1年を超える契約(一定の労働者を除く)は、開始から1年経過後なら労働基準法第137条で退職できます。
摩擦を避けるには契約書で満了日を確認し、その日に合わせて意思を伝えましょう。
契約書の更新条件と申出期限を確認する
雇用契約書や労働条件通知書には、契約期間、更新の有無、更新を判断する基準が書かれているため、伝え方を考える前にまずこの欄を確認します。
2024年4月からは、更新回数や通算期間に上限を設ける場合、上限の有無と内容を明示することが義務付けられました。就業規則や契約書に「更新しない場合は〇日前までに申し出る」といった期限が定められている例もあります。
定めがない場合でも、後任の手配を考えて満了の1か月前までに伝えるのが目安です。
2.自分から更新しないときの伝え方
この章では、自分から契約更新を断るときの理由のまとめ方と、口頭・メールで使える例文、引き止められた場合の断り方を紹介します。
理由は簡潔にまとめる
更新しない理由は、「一身上の都合」「今後の働き方を考えて」など一言で簡潔に伝えれば十分です。詳しく説明するほど、条件交渉による引き止めの糸口を与えたり、職場への批判と受け取られたりする可能性があります。
本音が待遇や人間関係への不満であっても、伝える場面では「別の仕事に挑戦したい」「家庭の事情で勤務を続けにくい」といった角の立たない表現に言い換えましょう。
ただし、嘘の理由を作る必要はなく、話せる範囲だけを話す姿勢で問題ありません。
口頭で伝える例文
口頭では、感謝を添えながら「更新しない」という結論をはっきり言い切りましょう。
「更新しないかもしれません」という言い方では、継続の余地があると受け取られかねません。
「お世話になっております。検討した結果、今回の契約期間の満了をもって更新を辞退したく、ご連絡しました」
「◯月末の満了日までは、これまでどおり責任を持って業務にあたります」
結論と満了日までの働き方をセットで伝えると、誠実な印象が残ります。
メールで伝える例文
対面の機会が取りにくい場合や、伝えた事実を記録に残したい場合は、メールでの連絡も有効です。
件名だけで用件が分かるようにし、本文は結論を先に書きます。
件名: 契約更新に関するご連絡(氏名) 本文: ◯◯様 お世話になっております。◯◯です。 ◯月◯日で契約期間が満了となりますが、検討の結果、今回の更新は辞退させていただきたくご連絡いたしました。満了日までは変わらず業務に努めてまいります。 |
送信後に口頭でも一言補足すると、行き違いを防げます。
引き止められたときの断り方
条件改善の提案を受けても続ける意思がない場合は、「ありがたいのですが、決めたことですので」と結論だけを繰り返すのが効果的です。引き止める側は、迷う素振りを交渉の余地と判断して提案を重ねてきます。
時給や配置の変更を提示された場面で「考えさせてください」と保留すると、かえって断りにくさが増すだけです。一方で、条件次第で続けてもよいと考えているなら、その場で希望条件を具体的に伝え、交渉として話し合う選択肢もあります。
3.派遣で更新しないときの伝え方
この章では、派遣スタッフが契約更新を断るとき、最初に誰へどの順番で伝えるべきかと、派遣会社の担当者へそのまま使える例文を紹介します。
派遣会社へ最初に伝える
派遣スタッフの雇用主は派遣先ではなく派遣会社のため、更新しない意思は最初に派遣会社の営業担当者へ伝えます。派遣先の上司に先に話すと、雇用契約を管理する派遣会社に状況が伝わらず、後任の手配や契約手続きが混乱する原因になります。
多くの派遣会社は満了の1か月前ごろに更新の意思を確認してくるので、その打診に合わせて回答すると自然です。打診を待たずに決めている場合は、電話で早めに連絡しておきましょう。なお、派遣先への説明は派遣会社が行うのが原則です。
派遣会社へ伝える例文
担当者には、就業先と自分の名前、満了日、更新しない結論の3つを最初に伝えると、話が早く進みます。
お世話になっております。◯◯社で就業中の◯◯です。 現在の契約は◯月末で期間満了となりますが、検討の結果、更新を辞退したくご連絡しました。満了日までは責任を持って勤務いたします 今後も派遣でのお仕事は続けたいので、次のお仕事のご紹介をお願いできますか |
継続して紹介を受けたいかどうかも伝えると、その後の提案がスムーズに進みます。
4.会社側が更新しないときの伝え方
この章では、会社側が契約を更新しない場合に確認すべき雇止めの有効性や30日前予告のルール、面談と書面通知の進め方を解説します。
雇止めが有効か確認する
通知前に、雇止めが労働契約法第19条に照らして有効か確認します。反復更新で実質的に無期契約と変わらない場合や、労働者が更新を期待する合理的な理由がある場合が対象です。
契約が満了する前に「更新したい」と会社へ申し出た場合、会社側にきちんとした理由がなく、誰が見ても行き過ぎだと感じられるような雇止めは認められません。この場合は、これまでと同じ条件で契約が更新されたものとして扱われます。
更新回数や通算期間、更新手続きの厳格さ、継続雇用を期待させる言動などを点検し、迷う場合は弁護士や社会保険労務士に相談すると安心です。
30日前予告が必要か確認する
契約を3回以上更新している場合や、1年以下の契約を更新・反復更新して通算1年を超えている場合、または1年を超える契約を締結している場合は、厚生労働省の基準により、少なくとも満了日の30日前までに予告が必要です。
ただし、契約時に更新しないと明示していた場合は対象外です。満了を待たない途中解雇では、労働基準法第20条に基づく30日前の解雇予告または解雇予告手当の支払いが別途求められます。予告期限から逆算して面談日程を組みましょう。
面談では理由を具体的に伝える
面談は結果を告げるだけの場にせず、なぜ更新しないのかを具体的な事実を挙げて説明することが大切です。雇止めは労働者の同意だけでは有効にならず、労働契約法第19条の適用があると理由の合理性や相当性が問われます。
「総合的に判断した」だけの説明では納得を得られず、トラブルにつながりがちです。業務の終了や事業縮小、仕事ぶりなど、期間満了以外の具体的な理由を伝え、質問にも答えましょう。
人柄を否定する言い方は避けて事実で説明し、面談は個室で行うなどプライバシーにも配慮します。
面談後に書面で通知する
口頭だけでは「言った言わない」の争いを防げないため、面談後は雇止め通知書などを交付して記録を残します。書面には、対象者の氏名、現在の契約期間と満了日、契約を更新しない旨、必要に応じて理由を明記します。
手渡しなら受領のサインをもらい、郵送なら配達記録が残る方法を選ぶと、30日前までに予告した事実の証明にもなります。
雇止め理由の証明書を求められた場合、遅滞なく交付する義務がある点も押さえましょう。
5.契約満了までの退職手続き
この章では、契約を更新しないと伝えた後の退職届の要否、引き継ぎや貸与品返却の進め方、離職票の離職理由の確認方法を説明します。
退職届が必要か確認する
契約期間の満了による退職は労働者からの解約申し入れではなく、法律上、退職届の提出は不要です。ただし、社内手続きとして提出を求める会社も多いため、就業規則や人事担当者に確認しておきましょう。
提出する場合の退職理由は「契約期間満了のため」と書きます。「一身上の都合により」と書くと自己都合退職を示す資料として扱われ、離職票の離職理由や基本手当に影響するおそれがあります。
最終的な離職理由は、ハローワークが事実を調べて判定します。
引き継ぎと貸与品の返却を進める
引き継ぎは満了日から逆算して計画し、業務手順や進行中の案件、関係者の連絡先を資料にまとめておくと、後任が未定でも引き継げます。
最終出勤日には貸与品の返却も必要です。
返すもの:
社員証・入館証、パソコン、制服、会社交付の資格確認書など受け取るもの:
源泉徴収票、雇用保険被保険者証、会社保管の年金手帳
なお、健康保険証は2025年12月1日に有効期限が満了しました。離職票は退職後に郵送されることが多いため、送付先住所も伝えましょう。
離職票の離職理由を確認する
給付制限や所定給付日数は離職理由で変わるため、離職票が届いたら理由欄を確認します。
契約期間満了でも、労働者が更新を希望しなかった場合は正当な理由のない自己都合離職として給付制限の対象になることがあり、2025年4月1日以降の離職では原則1か月です。
一方、更新を希望したのに会社が更新しなかった場合、条件により特定受給資格者または特定理由離職者に該当する可能性があります。事実と異なる記載に同意せず、ハローワークで異議を申し立てましょう。
6.会社から更新しないと言われたときの対処
この章では、会社から契約を更新しないと告げられたときの雇止め理由証明書の請求方法、相談窓口の使い方、派遣社員の場合の相談先を紹介します。
雇止め理由証明書を請求する
雇止めを告げられたら、理由を書面で確認するため、雇止め理由証明書を請求しましょう。厚生労働省の基準では、労働者から請求された使用者は遅滞なく交付しなければならず、予告の後でも雇止めの後でも請求できます。
証明書には契約期間の満了とは別に、更新しない具体的な理由が記載されます。内容が事実と異なっていれば会社に指摘する材料になり、労働局への相談や失業保険の手続きでも証拠として使えます。
納得できない場合は相談窓口を利用する
雇止めに納得できないときは、一人で抱え込まず、各都道府県労働局や労働基準監督署内の総合労働相談コーナーを利用しましょう。
無料・予約不要で、その雇止めが労働契約法第19条に照らして問題ないかについて一般的な助言を受けられ、必要に応じて労働局によるあっせんなどのトラブル解決手続きも案内してもらえます。
金銭補償や職場復帰まで踏み込んで争いたい場合は、労働問題に詳しい弁護士への相談や労働審判の利用も検討してください。
派遣社員は派遣会社へ相談する
派遣先から契約終了を告げられても、雇用契約の相手である派遣会社が相談先です。派遣契約と雇用契約は別で、派遣就業の終了だけで雇用契約も終わるわけではなく、派遣先の都合で就業が終わるときは次の派遣先の紹介を依頼できます。
離職理由は事実関係に基づきハローワークが判定するため、紹介がないまま雇用契約も終了する場合は離職票の離職理由を確認し、事実と違うときは相談しましょう。
派遣会社の対応に不満が残るときは総合労働相談コーナーも利用できます。
7.契約更新しないときのよくある質問
この章では、契約を更新しないと決めた方によくある質問として、契約満了前に有給休暇を消化できるかという疑問に回答します。
契約満了前に有給休暇を消化できる?
残っている年次有給休暇は、契約満了日まで消化できます。
労働基準法第39条で保障された権利のため、契約社員やパート、派遣スタッフも、勤続6か月以上・出勤率8割以上の条件を満たすと付与されています。
事業の運営に支障がある場合は在職中の別の日へ変更されることがありますが、退職日を越えた変更はできないため、早めに申請しておきましょう。
なお、派遣の場合の申請先は派遣先ではなく派遣会社で、使い切れない分の買い取りは会社の義務ではありません。
8.まとめ
契約更新しない意思は、伝え方の手順さえ押さえれば必要以上に身構えることはありません。まずは契約書で満了日と申出期限を確認し、満了の1か月前を目安に、更新しない結論と簡潔な理由を伝えましょう。
派遣スタッフの場合、最初の連絡先は派遣先ではなく派遣会社の担当者です。会社から更新しないと言われて納得できないときも、雇止め理由証明書の請求や総合労働相談コーナーへの相談など、取れる手段は残されています。
退職届や離職票、有給休暇の手続きは満了日から逆算して動くほど余裕が生まれます。手元の契約書を開くことから始めて、円満な契約満了への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
「IT派遣ボード」は、IT・Web特化・エンジニアのための派遣求人プラットフォームです。
得意な技術や経験を活かして自分に合った求人・仕事を探したい方や、AIマッチやスカウトを通じて希望条件にマッチした求人・仕事を効率よく受け取りたい方は、ぜひ「IT派遣ボード」をご利用ください。
