【この記事の結論】
・派遣社員の福利厚生は、社会保険や有給休暇を含め、原則として雇用主である派遣会社が提供します。
・社会保険や有給休暇などの法定福利厚生は、法律の加入条件を満たした時点で派遣会社から適用されます。
・派遣先の食堂や休憩室、更衣室は、労働者派遣法により派遣社員にも利用させる義務が派遣先企業にあります。
・同じ派遣会社に在籍したまま派遣先が変わった場合、有給休暇の日数や勤続期間は原則として引き継がれます。
・独自の優待や休暇制度は会社ごとに異なるため、登録前に利用資格や開始時期、自己負担額を確認しましょう。
・条件を満たしているのに制度が使えない場合は派遣会社へ連絡し、解決しない時は労働局へ相談できます。
派遣で働き始めるとき、社会保険や有給休暇、優待サービスがどこまで使えるのか分かりにくいと感じたことはないでしょうか。雇用主は派遣会社、指揮命令は派遣先という二重構造になっているため、正社員向けの説明がそのまま当てはまらない場面が出てきます。
「健康診断は誰が受けさせてくれるのか」「派遣先が変わったら有給はどうなるのか」といった疑問を抱えたまま、聞くタイミングを逃してしまう方も多いはずです。とはいえ、確認しないままでは本来使えるはずの制度を取りこぼしかねません。
本記事では、派遣社員に法律上適用される制度から、派遣会社が独自に用意するサービス、派遣先で使える施設の範囲、大手3社の傾向、比較するときの着眼点、制度が使えないときの相談先までをわかりやすく解説します。
目次
閉じる
1.派遣社員も福利厚生を利用できる
この章では、派遣社員の福利厚生を誰が用意するのか、法律で義務づけられた制度と任意の制度の違い、正社員との差が出る点を整理します。
福利厚生は原則派遣会社が提供
派遣社員の福利厚生は、雇用契約を結んでいる派遣会社が用意するのが原則です。指揮命令を受ける相手は派遣先ですが、給与を支払い、社会保険の手続きを行い、有給休暇を付与するのは派遣元の派遣会社です。
健康保険の資格取得手続きも派遣会社が行い、医療機関ではマイナ保険証または資格確認書を使います。従来の健康保険証は2024年12月2日から新規発行されておらず、有給休暇の申請先も派遣会社になります。
派遣先の社員向けに用意された住宅手当や社員旅行が、そのまま派遣社員に適用されるわけではありません。一方で派遣先にも労働者派遣法上の役割があり、食堂や休憩室のように就業環境へ直結する部分は派遣先が対応します。
二つの会社が役割を分担している構造を押さえておくと、困りごとが起きたときにどちらへ連絡すべきか迷いにくくなります。
法定と法定外の違い
福利厚生は、会社に義務があるかどうかで法定福利厚生と法定外福利厚生に分かれます。
法定福利厚生は、社会保険や労災保険のように加入要件を満たした場合に必ず適用され、保険料の一部または全部を会社が負担する仕組みで、年次有給休暇や定期健康診断も法律に基づいて実施される部分が含まれます。
法定外福利厚生は各社が内容を決めるため、優待サービスの充実度や慶弔見舞金の有無に差が生じます。
区分 | 主な内容 | 提供の性格 |
|---|---|---|
法定福利厚生 | 健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険、年次有給休暇 | 要件を満たせば必ず適用 |
法定外福利厚生 | 慶弔見舞金、特別休暇、優待サービス、研修・資格取得支援 | 各社が任意で設定 |
求人票に「福利厚生あり」とあっても、法定分だけなのか独自制度まで含むのかは会社ごとに異なるため、登録前に内訳まで確認しましょう。
正社員とは提供元や範囲が異なる
正社員との一番の違いは、待遇を用意する会社が勤務先ではなく派遣会社である点です。
2020年4月施行の改正労働者派遣法により、派遣社員の待遇は「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」のいずれかで決めることが義務づけられ、不合理な待遇差は禁止されました。
実務では労使協定方式を採る派遣会社が多数を占め、賃金は同種業務の一般労働者の平均以上を確保したうえで、給食施設・休憩室・更衣室や業務遂行に必要な教育訓練については、待遇決定方式にかかわらず派遣先にも必要な措置が求められます。
さらに2026年10月1日施行の改正省令・告示では、雇入れ時と派遣時の明示事項に「待遇の相違の内容及び理由等について説明を求めることができる旨」が追加されます。
説明を求める権利自体は現行法にもあり、改正後はその旨を明示することが必要になります。
2.派遣社員が使える法定福利厚生
この章では、法律に基づいて派遣社員へ適用される社会保険、労災保険、年次有給休暇、健康診断、産休・育休の要件と手続きを確認します。
社会保険
健康保険、厚生年金保険、雇用保険は、加入要件を満たした時点で派遣会社を通じて適用されます。基本となるのは、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上という基準です。
これに届かない場合でも、厚生年金保険の被保険者が常時51人以上の会社では、週20時間以上、月額賃金8.8万円以上、2か月を超える雇用見込み、学生でないという条件をすべて満たすと健康保険と厚生年金保険の対象になります(2026年7月25日時点)。
雇用保険は週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みが要件です。2025年成立の年金制度改正法により、月額賃金8.8万円以上という要件は2026年10月に撤廃される予定で、企業規模の要件も2027年10月から段階的に縮小されていきます。
短時間勤務を選んでいる方ほど、対象が広がる制度改正だと押さえておきましょう。
労災保険
仕事中や通勤途中のけがに備える労災保険は、派遣先ではなく派遣元の派遣会社で適用されます。保険料は全額を事業主が負担するので働く側の支払いはなく、勤務時間の長短や雇用期間にかかわらず、労働者として雇われている人が対象になります。
派遣先の工場や事務所で転倒してけがをした場合も、派遣会社へ速やかに連絡し、給付の種類に応じた請求書を医療機関や労働基準監督署へ提出します。請求手続きは被災した本人が行うこともでき、必ず派遣会社を経由するわけではありません。
通常は請求書に雇用主である派遣会社の証明を受け、災害発生状況について派遣先の協力も得ます。
現場で「うちでは対応できない」と言われても対象外になるわけではなく、事業主の証明を得られない場合でも請求書は受け付けられるため、最寄りの労働基準監督署へ相談しましょう。
年次有給休暇
雇入れの日から6か月間続けて勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合、原則として10日の年次有給休暇が付与されます。ただし、週の所定労働日数が少ない人には比例付与が適用されます。
付与するのは雇用主である派遣会社なので、同じ派遣会社に在籍したまま就業先が替わった場合は勤続期間が通算され、派遣先が変わるたびに日数がゼロへ戻ることはありません。
年10日以上付与された人には、会社が時季を指定してでも年5日を取得させる義務があり、これは派遣社員にも等しく適用されます。
申請先は派遣会社ですが、実際の業務調整には派遣先との連携が欠かせないため、休む日が決まったら早めに派遣先の担当者にも共有しておくと引き継ぎでもめにくくなります。
半日単位で取得できる制度を設けている会社もあるので、社内規程を見ておくと選択肢が広がります。
定期健康診断
派遣社員の一般健康診断は、雇用主である派遣会社が費用を負担して実施します。
対象となるのは「常時使用する労働者」で、契約期間が1年以上または更新により1年以上使用される見込みがあり、かつ1週間の労働時間が同種業務の正社員の4分の3以上であることが目安です。実施頻度は1年以内ごとに1回と定められています。
有機溶剤や放射線などの有害業務に従事する場合の特殊健康診断は、原則として作業を指揮する派遣先に実施義務があり、結果の記録の写しが派遣会社へ送られます。
案内が届かないまま1年以上が過ぎているときは、自分が対象要件を満たしているかを、受診時間の扱いや費用の負担先とあわせて派遣会社へ確認してみてください。
産休・育休・介護休業
有期雇用の派遣社員でも、要件を満たすと産前産後休業、育児休業、介護休業を取得できます。産前6週間(多胎妊娠は14週間)と産後8週間の休業は労働基準法に基づくもので、契約期間の長さを問わず対象になります。
産前休業は本人の請求が必要ですが、産後休業は請求の有無にかかわらず原則として就業できません。育児休業は、子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでないことが条件です。
介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得でき、取得予定日から93日を経過する日より6か月以内に契約が満了することが明らかでないことが要件になります。
申出先も給付金の手続きの窓口も派遣会社ですが、労使協定によって入社1年未満の人が対象外とされている場合もあるため、妊娠や介護の見通しが立った段階で早めに相談しておくと確実です。
3.派遣会社独自の福利厚生
この章では、派遣会社が任意で設けている休暇制度や健康サポート、研修、優待サービス、育児・介護支援の内容と使いどころをまとめます。
特別休暇・慶弔見舞金
結婚や忌引に対応する特別休暇や慶弔見舞金は、法律上の義務ではなく派遣会社が独自に設ける制度で、導入している会社では、勤続年数などの条件を満たした登録スタッフが利用できます。
パーソルテンプスタッフのように、慶弔事由が発生した日の勤続年数が3年以上であることを条件とし、裁判員に選ばれた場合の特別休暇もあわせて用意している例があります。同社では、慶弔事由発生日・申請日・休暇取得日に雇用契約があることも必要です。
有給か無給か、見舞金の金額、申請に必要な証明書類は会社ごとに違うので、就業条件明示書や社内規程で条件を確かめておきましょう。
同じグループでも派遣元の会社が異なれば内容が変わることがあるため、複数社に登録している方は登録先ごとに確認しておく必要があります。
健康・相談サポート
法定の健康診断に加えて、心身の不調やキャリアの悩みを相談できる窓口を整える派遣会社があり、ストレスチェックの実施、24時間対応のオンライン診療、医療保険や団体保険への割引加入などが代表例です。
パーソルテンプスタッフには登録スタッフとその家族が利用できるオンライン診療があり、24時間365日対応のサービスもそろっています。スタッフサービスグループには、リクルートグループの団体保険へ割引価格で加入する制度があります。
就業先で起きた困りごとについては、営業担当とは別に苦情処理の窓口が設けられているのが通常の運用です。不調を抱えたまま働き続けるより、契約更新前の面談で状況を伝えておくほうが、勤務日数や就業先の調整といった選択肢を取りやすくなります。
研修・資格取得支援
派遣会社には、段階的かつ体系的な教育訓練を行う義務が労働者派遣法第30条の2で定められています。
許可基準では、1年以上の雇用見込みがあるフルタイム勤務者に対し、入職時の訓練を含めて毎年おおむね8時間以上、少なくとも最初の3年間は毎年1回以上の機会を設けることとされ、この訓練は有給かつ無償で行われます。
実務ではeラーニングや提携スクールの優待受講という形が多く、パソナには1600種類以上のeラーニング講座があり、スタッフサービスグループは提携スクールや優待施設をそろえています。
すべての派遣労働者が利用できるキャリア相談窓口を設け、キャリアコンサルティングの知見を持つ担当者を配置することも許可基準の一つです。義務にあたる訓練か任意の優待講座かで自己負担が変わるため、申込み前に区別を確かめておくと安心できます。
レジャー・宿泊優待
宿泊施設やレジャー、スポーツクラブなどを割引価格で使える優待は、法定外福利厚生の中でも利用者が多い制度です。
外部の福利厚生代行サービスを導入する会社が多く、パソナはベネフィット・ステーションを通じて約140万件以上の優待を家族も対象に提供しています。このサービスは、パソナで就業中かつ社会保険加入期間中の人が対象です。
パーソルテンプスタッフは、旅行、ハウスクリーニング、カーシェア、ビジネス書の要約サービスなど、分野別に提携先をそろえています。
ここで注意したいのが利用資格の線引きで、登録しただけで使えるサービスと、ベビーシッター割引のように就業中の人へ限られるサービスが混在しています。優待の件数だけで判断せず、自分が使いたい分野が対象に入っているかを見ておきましょう。
育児・介護支援
仕事と家庭の両立を後押しする独自制度として、保育やベビーシッター、家事代行の割引を設ける派遣会社があり、法定の育児休業や介護休業を補って復帰後の働き方を支える位置づけです。
パソナはグループで運営する保育園や家事代行サービス、育児・介護に関する補助を設け、パーソルテンプスタッフは就業中の人を対象にベビーシッター利用料の割引券を用意しています。
パソナの保育園・育児補助金・介護補助金にはそれぞれ対象条件があり、家事代行サービスには登録スタッフ向けのものもあります。
利用には事前登録や申請期限が設けられている場合が多く、当日申し込んですぐ使えるとは限らないため、復職の時期が見えてきた段階で対象条件と申請の締切を担当者へ確認しておきましょう。
4.派遣先で利用できる福利厚生
この章では、派遣先が労働者派遣法に基づいて対応する施設と教育訓練の範囲、義務ではなく配慮にとどまる部分との違いを解説します。
食堂・休憩室・更衣室
給食施設、休憩室、更衣室の三つは、派遣先が自社の労働者に利用させている場合、派遣社員にも利用の機会を与えなければならないと労働者派遣法第40条第3項で定められています。
厚生労働省令で対象施設が特定されているため、派遣先の裁量だけで断ることはできません。その場で食事が提供される施設が給食施設にあたり、持参した弁当を食べたり休憩時間を自由に過ごしたりする場所は休憩室として扱われます。
ロッカーが足りないといった理由で利用を制限されたときは、法律上の義務にあたる旨を派遣会社経由で伝えるのが実務的な進め方です。
ただし、社員価格と派遣社員の利用料金が同額でないという事実だけで直ちに違反となるわけではなく、料金などの利用条件に不合理な相違があるかは、職務内容や待遇の目的などを踏まえて判断されます。
業務に必要な教育訓練
派遣先には、従事する業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を、派遣元から求めがあった場合に派遣社員へも実施する義務があります(労働者派遣法第40条第2項)。
自社の労働者へ同じ訓練を行っている場合が対象で、すでに本人が必要な能力を有しているときや、派遣元が同様の訓練をすでに実施した場合または実施できる場合などは例外にあたります。
安全教育、システムの操作研修、業務マニュアルの説明などが該当し、受講している時間は労働時間として扱われるのが原則です。
派遣元が行うキャリア形成のための訓練とは目的が異なり、こちらは目の前の現場で成果を出すための訓練にあたります。
着任後に説明のないまま作業を任されそうな場面では派遣会社を通じて訓練の実施を求められるので、安全にかかわる内容ほど、口頭の引き継ぎだけで済ませない姿勢が身を守ります。
その他の施設は配慮義務の対象
売店、診療所、保養所、社員寮といった施設は、利用させる義務ではなく「配慮義務」の対象です(労働者派遣法第40条第4項)。
自社の労働者が通常利用している施設について、派遣社員も利用できるよう必要な配慮をすることが派遣先に法的に求められており、単なる努力目標ではないものの、給食施設・休憩室・更衣室のように利用機会を必ず与える義務とは区別されます。
義務の強さが違うため、同じ会社の中でも食堂は使えるのに保養所は対象外という状況が起こり得ますが、配慮義務も法律上の求めであり、合理的な理由なく一律に排除する運用が望ましいとはいえません。
使いたい施設がある場合は、現場で直接掛け合うより派遣会社から確認してもらうほうが話は通りやすく、断られたときは理由と回答した人の役職を控えておくと、後の相談で状況を伝えやすくなります。
5.大手派遣会社3社の福利厚生を比較
この章では、テンプスタッフ、スタッフサービス、パソナの3社について、公開されている福利厚生の内容とそれぞれの特徴を取り上げます。
テンプスタッフの特徴
パーソルテンプスタッフは、社会保険、休暇、ヘルスケア、優待サービスの4分野を軸に制度を整えています(2026年7月25日時点)。
有給休暇は全日と半日の2種類から選べ、慶弔休暇・見舞金・裁判員特別休暇は勤続3年以上が条件で、慶弔休暇・見舞金では事由発生日・申請日・取得日に雇用契約があることも必要です。
定期健康診断とストレスチェックも用意され、優待では次のような提携先が並びます。
旅行:
プリンスホテルやHISの特別価格ライフサポート:
スポーツクラブ、カーシェア、ハウスクリーニング健康:
オンライン診療、更年期ケアなど女性の体調に関するサービス
目を引くのは、対象者が「登録スタッフ」と「就業中の方」に分けて明記されている点です。ベビーシッター割引は就業中の人が対象になるなど線引きがはっきりしているので、登録の段階でも見通しを立てやすい構成です。
スタッフサービスの特徴
スタッフサービスグループは、社会保険や有給休暇に加えて、健康面とスキル面のサポートを前面に出しています(2026年7月25日時点)。健康診断は年度内に春夏と秋冬の2回の機会が設けられ、対象者はどちらか1回を受診します。
就業1年目は、算定月の時点で雇用契約が4.5か月以上経過し、週30時間以上の契約であることなどが条件です。
リクルートグループの団体保険へ割引価格で加入できる制度もあり、教育面ではeラーニングや通信講座に加えて、全国の提携スクールの講座を優待価格で受講できる仕組みです。
健康診断の受診時期やスキルアップ制度の対象・料金は就業状況や講座によって変わり、制度の詳細が改定されることもあるため、最新の対象条件は公式サイトで確かめておきましょう。
パソナの特徴
パソナは、外部サービスと自社グループの資源を組み合わせた法定外福利厚生の幅広さが目立ちます(2026年7月25日時点)。
総合福利厚生サービスのベネフィット・ステーションでは、旅行やレジャー、グルメ、育児など18カテゴリーにわたる約140万件以上の優待を、家族も含めて利用できます。
利用できるのはパソナで就業中かつ社会保険加入期間中の人で、家族は配偶者と二親等以内の親族が対象です。スキルアップ向けのeラーニングは1600種類以上そろい、働きながら学びたい人に向いた構成です。
育児面ではグループが運営する保育園や家事代行サービス、育児・介護に関する補助もあり、保育園、補助金、家事代行で対象者が異なるため、登録のみで使えるのか就業中である必要があるのかを確認しましょう。
優待の総数は多いものの、対象エリアが限られるサービスもあるので、自分の生活圏で使えるかを見ておく必要があります。
6.派遣会社の福利厚生を比較するコツ
この章では、複数の派遣会社を比べるときに見落としやすい利用資格や費用負担、派遣先が変わった後の扱い、求人条件との兼ね合いを確認します。
利用資格と開始時期を確認
同じ制度名でも、登録した時点から使えるのか、就業を開始してからなのかは会社ごとに違います。
優待サービスは登録スタッフ全員が対象という会社がある一方、ベビーシッター割引のように就業中の人へ限る制度も珍しくなく、慶弔休暇のように勤続年数の要件が付く制度では、契約が途切れた期間の扱いによって条件を満たす時期がずれることもあります。
社会保険も契約期間や所定労働時間の設定次第で加入のタイミングが変わるため、比較するときは制度の有無ではなく「いつから、誰が使えるか」まで確かめておきましょう。
応募前に公式サイトの福利厚生ページで、対象者の記載を読んでおくと安心です。登録者本人だけでなく家族も対象となる制度では、親族の範囲や就業中・社会保険加入中といった追加条件も確認が必要です。
希望する優待と負担額を比べる
優待サービスは件数の多さより、自分が実際に使う分野が含まれているかで価値が決まります。年に一度の旅行割引しか使わない人と、毎月スポーツジムへ通う人とでは選ぶべき制度が変わるので、割引後の自己負担額と利用回数の上限を確認しておきましょう。
宿泊補助は年間何泊までか、eラーニングは受け放題か1講座ごとの課金か、健康診断のオプション検査は自己負担かといった点が、そのまま家計に効いてきます。
会員費が給与から差し引かれるのか会社負担なのかも見ておきたい項目で、似た内容の制度が並ぶときほど、金額と回数に落として比べると差がはっきりします。
派遣先変更後の継続条件を確認
派遣先が変わっても同じ派遣会社との雇用契約が続いている場合、有給休暇の勤続期間や社会保険の加入は原則として引き継がれます。
反対に契約と契約の間に空白期間が生じると、勤続要件のある制度や社会保険の資格に影響が出ることがあるため、次の就業先が決まるまでの間に健康保険をどう扱うのかは事前に聞いておきたい点です。
社会保険の資格を失った場合は、国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者、健康保険の任意継続などから選ぶことになります。
派遣会社そのものを乗り換えると勤続年数がリセットされ、慶弔休暇や一部の優待が使えなくなる可能性もあり、時給が数十円上がっても失う制度のほうが大きいという結果になりかねません。
移籍を検討するときは、継続される条件と手放す権利を並べて考えましょう。
求人数・時給・サポートも見る
福利厚生だけで派遣会社を選ぶと、肝心の仕事が見つからないという事態になりかねません。制度が充実していても、希望する職種や勤務地の求人が少ないと就業自体が始まらず、就業中限定の制度は使えないままです。
判断材料になるのは、扱う求人の量と分野、時給水準、担当者の対応スピード、契約更新時の相談のしやすさで、派遣会社は複数登録できるので、求人の幅を確保する会社と制度が手厚い会社を組み合わせる方法も現実的です。
マージン率や教育訓練に関する事項は各社に情報提供が義務づけられ、原則として常時インターネットで公開されるため、数字と制度の両面から比べて納得のいく一社を選びましょう。
7.福利厚生を使えないときの対処法
この章では、想定していた制度が使えないときに確認する順序と、社内で解決しない場合に頼れる公的な相談先までの流れを整理します。
利用条件と申請方法を確認
制度が使えないと感じたときは、まず対象条件と申請手続きを読み直すところから始めます。勤続年数、週の所定労働時間、契約期間、就業中かどうかといった条件のどれかを満たしていない例が多く見られます。
申請の締切や書類の不足で受け付けられていないこともあり、慶弔見舞金では、事由の発生から一定期間内という期限が設けられている場合があります。確認する資料は、就業条件明示書、労働条件通知書、派遣会社の会員サイトや社内規程です。
条件を満たしているのに使えない状態であれば運用側の問題である可能性が出てくるので、該当する記載箇所を控えておくと、その後の問い合わせがスムーズに進みます。
派遣会社の窓口へ問い合わせる
条件を満たしているのに利用できないときの問い合わせ先は、雇用主である派遣会社です。
担当営業のほか、就業条件明示書に書かれた派遣元責任者や苦情の申出先へ連絡する方法もあり、伝えるときは、利用したい制度名、自分の契約内容、断られた経緯と日付を整理しておくと話が早く進みます。
口頭だけで終わらせず、メールなど記録が残る形でやり取りしておくことも役立ちます。2026年10月1日以降は、待遇の相違の内容や理由について説明を求められる旨が雇入れ時と派遣時に明示されるようになり、根拠を尋ねる手がかりが増えます。
待遇差の内容・理由などについて説明を求めたことを理由とする解雇その他の不利益な取り扱いは、現行法でも禁じられています。
派遣先施設は担当者経由で確認
食堂や休憩室など派遣先の施設に関する話は、現場で直接交渉するより派遣会社の担当者を通すほうが確実です。派遣先との契約内容を知っているのは派遣会社であり、施設利用の取り決めも労働者派遣契約に関わってきます。
給食施設、休憩室、更衣室については派遣先に利用機会を与える義務があるので、その旨を派遣会社から伝えてもらう進め方が取りやすくなります。売店や保養所のような配慮義務の施設は、相談の余地はあるものの必ず使えるとは限りません。
ただし、配慮義務も法律上の義務であり、派遣先は利用に関して必要な配慮をしなければなりません。断られた場合は、理由と回答した人の役職を記録に残しておきましょう。
現場の担当者が制度を正確に理解していないだけということもあり、正式に確認を挟むだけで解決する場面もあります。
不合理な待遇差は公的窓口へ相談
派遣会社との話し合いで解決しない場合は、都道府県労働局の需給調整事業部門や総合労働相談コーナーへ相談できます。
労働者派遣制度に関する相談は各都道府県労働局の担当部門が総合的に受け付けており、どの分野の問題か判断しにくいときは総合労働相談コーナーが入口になります。
不合理な待遇差や、待遇差の内容・理由の説明に関するトラブルは、都道府県労働局長による助言・指導や紛争調整委員会の調停といった裁判外紛争解決手続(行政ADR)の対象で、費用がかからず非公開で進められます。
援助を申し出たことや調停を申請したことを理由とする解雇その他の不利益取り扱いは禁止されています。相談する際は、契約書や説明を受けたときの記録を持参すると状況が正確に伝わります。
8.まとめ
派遣社員の福利厚生は、雇用主である派遣会社が中心となって提供し、派遣先は食堂や休憩室、教育訓練の機会を担います。社会保険や有給休暇、健康診断は要件を満たせば法律で保障される制度なので、遠慮なく申し出て構いません。
会社選びで見るべきは、制度の有無より利用資格と開始時期、自己負担額、派遣先が変わった後も使えるかの4点です。登録前に2〜3社を見比べておけば、自分に合う一社が見えてきます。
条件を満たすのに使えないときは派遣会社の窓口へ相談し、解決しなければ都道府県労働局を頼りましょう。制度を上手に使って、納得できる働き方への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
「IT派遣ボード」は、IT・Web特化・エンジニアのための派遣求人プラットフォームです。
得意な技術や経験を活かして自分に合った求人・仕事を探したい方や、AIマッチやスカウトを通じて希望条件にマッチした求人・仕事を効率よく受け取りたい方は、ぜひ「IT派遣ボード」をご利用ください。
