【この記事の結論】
・派遣先の都合で急に仕事がなくなった場合でも、休業手当の支払い義務は雇用主である派遣元にあります。
・派遣契約が途中で解除されても即解雇にはならず、雇用契約が続く限り派遣元に休業手当を請求できます。
・休業手当は会社都合で派遣元から支払われ、休業補償は業務や通勤中のケガにより労災から支給されます。
・休業手当は平均賃金の6割以上が支払われますが、休日を含めた計算のため実際の給与の六割を下回ります。
・業務災害の休業開始から3日間は労災給付が出ないため、事業主である派遣元が休業補償を支払います。
「派遣先の都合で急に仕事がなくなった」「業務中のケガで、働けない間の収入が心配」など派遣で働いていると、こうした場面に直面することがあります。
このようなとき頼りになるのが休業手当と休業補償ですが、名前が似ているため、自分のケースがどちらに当たるのか分からず不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
両者は対象となる原因も、支払う相手も、金額の決まり方も異なるため、違いを知らないままでは本来受け取れるはずの補償を逃してしまうおそれがあります。
本記事では、派遣社員が休業手当・休業補償を受けられる条件から金額の計算方法、支払う人と支給される期間、そして「支給されないのでは」と感じたときの確認手順までをわかりやすく解説します。
目次
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1.派遣の休業手当と休業補償の違い
この章では、混同されやすい休業手当と休業補償について、原因や支払元、金額の違いと、自分のケースがどちらに当たるかの見分け方を整理します。
休業手当は会社都合の休業が対象
休業手当は、会社側の都合で働けなくなったときに、賃金の一部を補うために支払われる手当です。
労働基準法第26条は、使用者の責任による休業について平均賃金の60%以上の支払いを義務づけており、派遣社員の場合はこの義務を雇用主である派遣会社(派遣元)が負います。
対象になりやすいのは、経営不振による自宅待機や資材不足・機械故障での操業停止、会社の指示による早退など、労働者側に落ち度がない休業です。
受け取った休業手当は賃金として扱われるため、所得税や社会保険料の対象になります。派遣先の事情で仕事がなくなった場合でも、派遣元にとって「使用者の責に帰すべき事由」に当たるかどうかで判断される点が特徴です。
休業補償は業務災害による休業が対象
休業補償は、業務中や通勤中のケガ・病気で働けなくなったときに、労災保険から支給される給付です。労災保険法に基づき、療養のため働けず賃金を受けられない状態であることが要件になります。
支給額は1日につき給付基礎日額の80%で、休業(補償)等給付の60%と休業特別支給金の20%を合わせた金額です。ただし、休業開始から3日間は待期期間として支給がなく、対象は4日目以降となります。
給付基礎日額は原則として労働基準法の平均賃金にあたり、事故発生前3か月間の賃金総額を暦日数で割って求めます。
派遣社員も派遣元が加入する労災保険の対象で、休業補償は非課税であることや、労働基準監督署長へ請求して政府から支給されることも休業手当との違いです。
迷ったら休業の原因から判断する
どちらに当たるか迷ったときは、休業のきっかけが「会社の都合」なのか「業務・通勤によるケガや病気」なのかを確認すると整理しやすくなります。
会社都合であれば休業手当、業務災害・通勤災害であれば休業補償の枠組みで考えます。
支払元や金額、税務上の扱いなど細かな違いは、次の表で確認してください。
項目 | 休業手当 | 休業補償 |
|---|---|---|
原因 | 派遣元の責に帰すべき事由 | 業務災害・通勤災害 |
支払元 | 派遣元(会社) | 政府(労働基準監督署長へ請求) |
金額 | 平均賃金の60%以上 | 給付基礎日額の80%相当 |
税務 | 課税 | 非課税 |
根拠 | 労働基準法26条 | 労災保険法・労働基準法76条 |
なお、業務と無関係な私的なケガや病気はどちらにも当たらないため、健康保険の傷病手当金などを検討することになります。
2.派遣で休業手当をもらえる条件
この章では、派遣社員が休業手当を受け取れる条件を、派遣元の責任の範囲や派遣先都合の考え方、働く意思の要件、対象外になるケースの順に整理します。
派遣元の責任による休業が対象
休業手当の対象になるのは、雇用主である派遣元の責めに帰すべき事由で休業した場合です。労働基準法第26条にいう「使用者」は、派遣社員にとって雇用契約を結ぶ派遣会社を指すため、支払う責任も派遣元にあります。
この「責に帰すべき事由」は故意や過失に限らず、経営上の理由や取引先の事情なども広く含むと解釈されており、派遣元に落ち度がなくても対象になり得ます。
たとえば、派遣先との契約が途中で解除され、次の就業先を用意できない期間は、一般に派遣元の責任による休業に該当します。一方で、天災などの不可抗力に当たる場合は対象外となることがあるため、迷ったときは休業の原因が派遣元の管理下にある事情かどうかを確認します。
派遣先都合でも派遣元を基準に判断する
派遣先の都合で仕事がなくなった場合でも、休業手当の支払い義務は雇用関係のある派遣元を基準に判断します。派遣先の事業縮小や業務減少で派遣契約が解除・中断されても、派遣社員の雇用契約は派遣元との間に残るためです。
そのため、派遣先の事情による休業でも、派遣元に使用者としての責任が認められれば休業手当の支払い義務が生じ、派遣契約の中途解除による休業は一般にこれに該当します。
派遣元は契約内容によっては休業に伴う費用を派遣先へ請求できる場合がありますが、実際の費用負担者が派遣先であっても、派遣社員に直接支払うのはあくまで派遣元です。
派遣先が変わっても雇用主は変わらないと押さえておくと、誰に確認すべきかが分かりやすくなります。
雇用契約中で働く意思と能力が必要
休業手当を受けるには、雇用契約が続いていて、本人に働く意思と能力があることが前提です。
休業手当は「働けるのに会社の都合で働けない」状態を補う制度のため、自分から辞退した場合や、病気やケガで就労できない場合は、会社都合の休業とは評価されにくくなります。
また、契約期間が満了して雇用関係が終われば、その後の期間について休業手当を求めることはできません。
派遣では契約更新のタイミングと休業が重なりやすいため、契約期間中の休業かどうかを確認することが大切です。なお、就業を打診されたのに正当な理由なく断ると、働く意思がないとみなされる可能性がある点にも注意してください。
不可抗力や本人都合は対象外になり得る
天災などの不可抗力による休業や、本人の私的な事情による休業は、休業手当の対象外になり得ます。労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」に当たらない休業は、支払い義務の範囲外です。
台風や地震などで事業の継続が客観的に不可能になった場合は、使用者の責任とは言い切れず、休業手当が発生しないと整理されることがあります。ただし派遣では、派遣先が不可抗力で休業しても、派遣元が他の派遣先を確保できたかなどを含めて判断されます。
本人の私的な病気やケガ、自己都合の欠勤も対象外ですが、感染症でも法的な就業制限がない中で会社が独自に休ませた場合は会社都合と評価される余地があり、原因の切り分けが重要になります。
3.派遣先都合で仕事がなくなった場合
この章では、派遣先の都合で仕事がなくなったときの考え方を、契約の関係や派遣元の責任、休業手当の確認、解雇との違いに分けて説明します。
派遣契約と雇用契約は別に扱う
派遣で仕事がなくなったときは、派遣先との「派遣契約」と、派遣元との「雇用契約」を分けて考えることが出発点になります。
派遣契約は派遣元と派遣先の間で就業先や業務内容を定める契約であり、派遣社員の給与や雇用の安定に関わるのは派遣元との雇用契約です。そのため、派遣先の都合で派遣契約が終了しても、雇用契約が自動的になくなるわけではありません。
この二つを混同すると「派遣先を切られた=失業」と思い込んでしまいやすいですが、雇用契約が残っていれば、派遣元には次の就業先を探したり休業手当を検討したりする責任が残ります。
仕事がなくなったと感じたら、まず自分の雇用契約が続いているかを確認することが、その後の対応の土台になります。
派遣元は新しい就業先の確保に努める
派遣先との契約が終わっても雇用契約が残っている間は、派遣元は新しい就業先の確保に努める立場にあります。派遣元指針が、派遣労働者に責任のない派遣契約の中途解除について、派遣先と連携して新たな就業機会を確保する措置を求めているためです。
派遣先の都合で契約が途中終了した場合、派遣元は派遣先の関連会社での就業のあっせんを受けたり、新たな派遣先を確保したりして、雇用を維持する努力をすることになります。
特に派遣先の一方的な都合による中途解除では、新たな就業機会の確保が難しいときに、休業手当などの支払いによって雇用主としての責任を果たすことが求められます。
すぐに次の仕事が決まらなくても、雇用契約が続く限り無収入で放置されるわけではないという前提で相談を進めましょう。
次の仕事がなければ休業手当を確認する
次の就業先がすぐに決まらない場合は、休業手当を受けられるかどうかを派遣元に確認するのが現実的な対応です。雇用契約が続いているのに就業先を用意できない期間は、派遣元に使用者としての責任が認められれば、平均賃金の60%以上の休業手当の対象になります。
ただし、休業手当が自動的に振り込まれるとは限らないため、「いつからいつまでが休業扱いか」「休業手当は支給されるか」「支給額はいくらか」を具体的に尋ねましょう。
就業を打診されたのに断ると働く意思がないと見られることもあるため、紹介された仕事の条件も冷静に検討してください。なお、休業手当が支払われる雇用契約中は通常失業状態には当たらないため、まず休業手当を軸に考えるのが基本です。
中途解除でも直ちに解雇とはならない
派遣契約の中途解除は、派遣元と派遣先の契約が途中で終わることを指し、そのまま派遣社員の解雇を意味するわけではありません。中途解除で終わるのは会社同士の契約であり、派遣社員と派遣元の雇用契約は別に存在します。
そのため、派遣先が契約を打ち切っても派遣元が解雇するかどうかは別の判断であり、雇用を維持する場合は休業手当の支払いや次の就業先の紹介で対応します。
仮に派遣元が解雇に踏み切る場合でも、労働契約法などのルールに沿った手続きが必要で、期間の定めのある契約では、やむを得ない事由がなければ契約期間中の解雇は認められにくいとされています。
「派遣先を切られた」と伝えられたときは、それが雇用契約の終了なのか休業への切り替えなのかを派遣元に確認することが大切です。
4.派遣の休業手当は誰がいつまで払う?
この章では、派遣の休業手当を誰がいつまで支払うのかを、派遣元の義務や派遣先の費用負担、支給期間、契約満了後の扱いに分けて整理します。
派遣社員への支払義務は派遣元にある
派遣社員へ休業手当を直接支払う義務を負うのは、就業先の派遣先ではなく、雇用主である派遣元(派遣会社)です。労働基準法第26条の休業手当は、労働者と雇用契約を結ぶ「使用者」が支払う仕組みであり、派遣社員にとっての使用者は派遣元だからです。
そのため、休業の原因が派遣先にあったとしても、休業手当を請求する相手は派遣元になります。給与明細の発行元や社会保険の加入先が派遣元であることからも、雇用主が誰かを確認できます。
問い合わせるときは、派遣先の担当者ではなく派遣元の営業担当や管理部門に連絡し、窓口の取り違えによる対応の遅れを防ぎましょう。
派遣先が費用を負担する場合もある
派遣社員へ直接支払うのは派遣元ですが、その費用を最終的に派遣先が負担する場合もあります。派遣契約には、中途解除時に講じる措置や休業手当などの費用負担に関する事項を定める必要があります。
派遣先の一方的な都合で契約を中途解除し、新たな就業機会を確保できない場合、派遣先は指針に基づき、休業手当相当額以上など派遣元に生じた損害の賠償が必要です。
自然災害で派遣先が一時休業したときの費用の扱いは、派遣契約の内容や双方の責任の度合いによって決まります。
ただし、これはあくまで会社同士の費用清算の話であり、派遣社員から見れば受け取る相手は派遣元のままのため、費用負担の問題と休業手当を受け取れるかどうかは分けて整理しておくと混乱しません。
支給期間は雇用契約と休業状況で決まる
休業手当の支給期間は、雇用契約が続いている間に、使用者の責任で休業した所定労働日がどれだけあるかで決まります。休業手当は本来働くはずの日を休業させた場合に支払われるため、休業が続く限り、雇用契約の範囲内で支給対象になります。
労災の休業補償のような「待期3日」の制限はなく、原則として休業初日から対象になる点が特徴で、1日のうち一部だけ働いた日も条件を満たせば差額分が支払われます。
ただし、新しい就業先で働き始めた日以降は休業ではなくなるため支給が終わり、雇用契約そのものが満了すれば、その後の期間も対象外です。「いつまでもらえるか」は、対象となる休業が続く期間と雇用契約の期間をあわせて確認して判断します。
契約満了後は雇用の継続有無を確認する
契約満了を迎えたときは、雇用が続くのか終わるのかによって、その後に受け取れる制度が変わります。
休業手当は雇用契約が前提のため、契約が満了して更新されなければ、満了日の翌日以降について休業手当を求めることはできず、代わりに雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)を検討することになります。
派遣では、契約満了後すぐに次の派遣先が決まらないと、休業なのか離職なのかがあいまいになりがちです。そのため、派遣元に「契約は更新されるのか」「更新されない場合の離職理由はどう扱われるのか」を確認しておきましょう。
離職票の離職理由は失業給付の給付制限の有無や所定給付日数に影響するため、契約満了前後に雇用の継続有無をはっきりさせることが、収入の空白を防ぐうえで重要です。
5.派遣の休業手当はいくらもらえる?
この章では、派遣の休業手当の金額について、最低基準となる60%の意味や平均賃金の計算方法、一部休業や全額支給の考え方を整理します。
平均賃金の60%以上が最低基準
休業手当として最低限支払われるのは、労働基準法が定める平均賃金の60%以上の額です。
労働基準法第26条は、使用者の責任による休業について平均賃金の60%以上の支払いを義務づけており、「以上」とあるとおりこれは下限のため、就業規則や労働契約でより手厚い支給を定めることもできます。
計算の基本は「平均賃金×0.6×対象となる休業日数」で、時給制や日給制の人には、労働した日数を基にした最低保障額と比べる計算方法も定められています。
派遣社員も、雇用契約を結ぶ以上はこの基準の対象です。
まずは「平均賃金の6割が最低ライン」と押さえたうえで、自分の契約や就業規則にそれを上回る定めがないかを確認すると、受け取れる金額の見当がつきます。
給料の60%とは限らない
休業手当は「平均賃金」の60%であり、月給や日給そのものの60%とは限らない点に注意が必要です。
平均賃金は直前3か月の賃金総額を「暦日数」で割って計算するため、土日や祝日など働いていない日も分母に含まれ、実際に働いた日数で割った1日あたりの賃金よりも低くなる傾向があります。
その平均賃金にさらに60%を掛けるため、受け取る休業手当は、ふだんの給料の6割よりも少なく感じられることが少なくありません。
ただし、日給制や時給制には実労働日数を用いる最低保障があり、単純な暦日割りの額だけで決まるとは限りません。「給料の6割はもらえる」と思い込むと差が生じやすいため、平均賃金の計算方法を踏まえて具体的な金額を見積もることが大切です。
平均賃金は直前3カ月を基に計算する
平均賃金は、休業などの事由が発生した日の直前3か月間に支払われた賃金をもとに計算します。
対象期間や計算式、賃金に含めるもの・除くものは次の表のとおりです。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象期間 | 事由発生日以前の直前3か月間(賃金締切日がある場合は直前の締切日から起算) |
計算式 | 賃金総額 ÷ 期間の暦日数 |
含める賃金 | 基本給・通勤手当・時間外手当など |
除く賃金 | 臨時の賃金・3か月を超える期間ごとに支払われる賞与など |
(参照:https://jsite.mhlw.go.jp/shiga-roudoukyoku/content/contents/000651773.pdf)
時給制や日給制の場合は、表の計算式で出た額と「3か月間の賃金総額 ÷ 実労働日数 × 60%」で計算した額を比べ、高い方が最低保障になる仕組みがあります。
労災の休業補償で使う給付基礎日額も、原則としてこの平均賃金に相当します。自分の平均賃金は、給与明細をもとに派遣元に確認すると正確です。
一部休業は当日の賃金との差額を確認する
1日の一部だけ働いて早退や遅刻をした日でも、その日の賃金が平均賃金の60%に届かなければ差額が支払われます。労働基準法第26条は、丸一日の休業だけでなく、1日のうち一部を休業した場合にも適用されます。
たとえば会社の都合で半日で帰された日は、実際に働いた分の賃金が平均賃金の60%に満たないとき、60%に達するまでの差額を休業手当として補う必要があります。一方で、受け取った賃金が平均賃金の60%以上あれば、その日について追加の休業手当は発生しません。
派遣では就業時間の短縮や一時的な自宅待機が部分的に生じることもあるため、時短勤務の日が続くときは、日ごとに賃金が平均賃金の6割に達しているかを確認すると、不足分の請求漏れを防げます。
全額支給は就業規則や契約で決まる
平均賃金の60%を超える手当や賃金の全額補償を受けられるかどうかは、就業規則や契約の定めに加えて、民法536条2項が適用されるかどうかで決まります。
法律が求める休業手当は60%以上という下限ですが、使用者の責めに帰すべき事由で働けない場合、民法上は賃金の全額を請求できることがあるためです。就業規則や労働協約、労働契約に「休業中は賃金の全額を支払う」といった定めがあれば、その内容に従います。
また、休業に至った事情によっては60%では足りないと判断された例もあり、派遣先からのクレームを理由に派遣元が契約解除に応じて派遣社員を休業させたケースで、賃金全額の補償が必要とされた裁判例が知られています。
自分の場合に上乗せや全額支給があるかは、就業規則や雇用契約書の休業に関する条項を確認し、不明点は派遣元に問い合わせるのが確実です。
6.派遣の休業補償はいつ・いくらもらえる?
この章では、業務中や通勤中のケガ・病気に対する休業補償について、給付の要件や待期3日間の扱い、支給額、労災申請の進め方を整理します。
業務・通勤災害の給付要件を確認する
労災の休業補償を受けるには、業務災害または通勤災害による療養中で、働けず賃金を受けられない状態であることが必要です。
労災保険の休業(補償)等給付は、次の3つをすべて満たすときに支給されます。
要件 | 内容 |
|---|---|
療養 | 業務災害・通勤災害によるケガや病気で療養している |
労働不能 | 療養のため働くことができない |
賃金なし | その休業について賃金を受けていない |
(参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000166858.html)
派遣社員も労災保険の対象で、派遣先の職場でのケガでも、派遣元が加入する労災保険で扱われる点が特徴です。なお、一部賃金を受けた日でも、所定の計算による給付を受けられる場合があります。
私的な病気やケガは労災に当たらず、健康保険の傷病手当金などを検討することになるため、まずはケガや病気の原因が業務や通勤にあるかどうかを確認することから始めましょう。
業務災害の待期3日は派遣元が補償する
業務災害では、労災給付が出ない最初の3日間について、事業主である派遣元が休業補償を行います。労災保険からの休業補償は休業4日目以降が対象で、最初の3日間(待期期間)は支給されません。
この3日間は、業務災害の場合、労働基準法第76条により事業主が平均賃金の60%の休業補償を支払う義務があり、派遣社員にとっての事業主は派遣元のため、派遣元が補償することになります。
注意したいのは通勤災害で、労働基準法上の災害補償の対象ではないため、待期3日間に事業主の補償義務はなく、就業規則などに定めがなければ無給になり得ます。
なお、待期は連続する必要がなく、所定労働時間の一部のみ休業した日も1日として数えます。
4日目から給付基礎日額の80%相当
休業4日目からは、休業(補償)等給付の60%と休業特別支給金の20%を合わせて、1日につき給付基礎日額の80%相当が労災保険から支給されます。
給付基礎日額は原則として労働基準法の平均賃金にあたり、事故発生前3か月間の賃金総額を暦日数で割って求めるため、たとえば給付基礎日額が1万円なら、1日あたり休業補償給付6,000円と特別支給金2,000円の合計8,000円が目安です。
支給は療養のため働けず賃金を受けられない期間について続き、これらの給付は非課税です。ただし、労災保険給付は賃金ではないため社会保険料算定の対象にならない一方、休業中も被保険者資格が続けば、健康保険・厚生年金保険料の負担は原則として続きます。
金額の詳細は、給付基礎日額を派遣元や労働基準監督署に確認すると正確です。
労災申請は派遣元に相談する
労災の休業補償を申請するときは、まず雇用主である派遣元に相談して手続きを進めます。
労災は派遣元の事業で成立する労災保険関係で処理され、申請書類の事業主証明も原則として派遣元が行うためです。
派遣先の職場でケガをした場合でも、派遣先はまず派遣元へ連絡し、被災した本人が労働基準監督署長へ請求する流れが基本になります。
休業(補償)給付の請求書には、平均賃金の算定など事業主が記載・証明する欄があるほか、療養の状況について医師の証明も必要です。派遣元が事業主証明を拒否しても労災請求はできるため、その場合は労働基準監督署へ相談することをおすすめします。
派遣先と派遣元の間で連絡が滞ると手続きが遅れることがあるため、ケガや発症の日時・状況を記録し、早めに派遣元へ伝えることが大切です。
7.休業手当をもらえないときの対処法
この章では、休業手当が支給されないと感じたときの対処法を、契約と理由の確認、書面での問い合わせ、記録の残し方、相談先の順に整理します。
雇用契約書と休業理由を確認する
休業手当がもらえないと感じたら、まず雇用契約書と、会社が示す休業理由を確認することから始めます。休業手当の対象になるかどうかは、休業の原因が派遣元の責めに帰すべき事由かどうかで決まります。
雇用契約書や就業条件明示書で契約期間が続いているか、休業に関する定めがないかを確かめたうえで、会社が休業をどう説明しているかを整理します。
「仕事がないため」「派遣先の都合で」といった理由なら会社都合の休業に当たる可能性がありますが、派遣元が他の就業先を確保できたかなども含めて判断され、「天災のため」「本人の体調不良のため」であれば扱いが変わります。
理由があいまいなまま「欠勤」として処理されると対象から外れることもあるため、自分の契約状況と休業の位置づけを客観的に把握することが第一歩です。
支給条件と計算根拠を書面で尋ねる
支給の有無に納得がいかないときは、支給条件と金額の計算根拠を、口頭だけでなく書面で尋ねると確実です。口頭でのやり取りは後から食い違いが生じやすく、記録も残りにくいです。
メールや書面で、「この休業は休業手当の対象か」「対象なら平均賃金はいくらで、いくら支給されるのか」「対象外ならその理由と根拠は何か」を具体的に質問します。
派遣元が法定の休業手当を支払う場合は労働基準法第26条に沿った額である必要があるため、回答をもとに平均賃金の算定期間や計算式が正しいかを自分でも確認できます。
やり取りをメールなどで残しておくと、後で労働基準監督署に相談する際の資料にもなるため、感情的にならず、事実と根拠を淡々と確認する姿勢が話を前に進めるうえで役立ちます。
欠勤・自宅待機の扱いを記録する
会社都合の休業を「欠勤」や自主的な休みとされないよう、休んだ日の経緯を自分でも記録しておきます。会社都合の休業と本人都合の欠勤とでは、休業手当の扱いが正反対です。
自宅待機を指示された日や就業を打診されなかった日、シフトを外された日を日付とともにメモに残し、派遣元や派遣先からの指示はメールやメッセージの形で保存しておくと証拠になります。
あわせて給与明細で、その期間が「欠勤」なのか「休業」なのか、休業手当の項目があるかも確認します。記録があれば「働く意思はあったが会社の都合で就業できなかった」ことを説明しやすくなり、自宅待機が会社側の判断だった点をはっきりさせておくことが、後の請求で効いてきます。
労働基準監督署などへ相談する
会社との話し合いで解決しないときは、労働基準監督署などの公的な窓口に相談できます。
労働基準法第26条の休業手当は法律上の義務であり、支払われない場合は労働基準監督署が相談や申告の窓口です。
相談の際は、雇用契約書や給与明細、休業の経緯を記録したメモ、会社とのやり取りの記録を持参すると状況が伝わりやすくなります。
ほかにも、各都道府県労働局の総合労働相談コーナーでは労働問題全般を無料で相談でき、金額や解雇の有無で争いが深刻な場合は、弁護士や労働組合(合同労組を含む)に相談する方法もあります。
一人で抱え込まず、証拠をそろえたうえで内容に応じた相談先を選ぶことが解決への近道で、まずは無料の窓口から始めると負担が少なくて済みます。
8.まとめ
本記事では、派遣の休業手当と休業補償の違いから、もらえる条件、金額の計算方法、支払う相手と支給期間、支給されないときの対処法までを解説してきました。
会社都合の休業なら平均賃金60%以上の休業手当、業務・通勤災害なら給付基礎日額80%相当の休業補償と、休業の原因によって受けられる制度は変わります。
派遣先の都合で仕事がなくなっても、雇用契約が続く限り派遣元に相談できるため、まずは契約状況と休業理由を確認しましょう。
支給に疑問があるときは計算根拠を書面で尋ね、解決しない場合は労働基準監督署にも相談できます。正しい知識を備えて、収入の不安を減らしながら安心して働き続けていきましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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