【この記事の結論】
・派遣社員は派遣会社が年末調整を行うため、原則として自分で確定申告を行う必要はありません。
・複数社での勤務や副業所得が20万円を超える場合、医療費控除等を利用する場合は確定申告が必要です。
・年の途中で退職して年末調整を受けていない場合でも、確定申告をすれば納めすぎた税金が戻ることがあります。
・確定申告を怠ると加算税や延滞税がかかるだけでなく、住民税の計算や所得証明書の発行にも悪影響を及ぼします。
・マイナポータル連携や国税庁の作成コーナーを活用すれば、必要書類の情報を自動入力できてスムーズに申告できます。
派遣社員として働いていると、「確定申告は自分でやるべきなのか」「年末調整だけで済むのか」と迷う場面は少なくありません。
派遣会社が年末調整を行うため原則は申告不要ですが、その仕組みや例外を正しく押さえておかないと、本来戻るはずの税金を取り戻せなかったり、申告漏れで余計な負担を抱えたりする原因になりかねません。
特に、複数の会社で働いた方や副業収入がある方、医療費控除や住宅ローン控除を使いたい方は、自分で確定申告が必要になるケースに当てはまります。「自分は対象なのだろうか」と不安を感じているうちに、申告期限が近づいてしまうことも少なくないでしょう。
本記事では、派遣社員に確定申告が必要なケースと不要なケースの違いから、申告に必要な書類、具体的な手続きの流れ、申告しなかった場合の影響までをわかりやすく解説します。
目次
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1.派遣社員に確定申告は必要?
この章では、派遣社員に確定申告が必要かどうかを、年末調整との関係や還付の可能性を含めて解説します。
年末調整済みなら原則として申告不要
派遣会社で年末調整が済んでいれば、派遣社員が自分で確定申告をする必要は原則ありません。派遣社員の雇用主は派遣先ではなく派遣会社であり、毎月の給与から源泉徴収された所得税は年末調整で精算されるためです。
ただし、複数の勤務先から給与を受け取っている場合や、年末時点で派遣会社に在籍していない場合は、確定申告が必要になることがあります。
源泉徴収票は年末調整の有無にかかわらず発行されるため、年末調整が済んでいるかどうかは派遣会社からの案内や源泉徴収票の記載内容で確認しましょう。
確定申告と年末調整の違い
確定申告と年末調整は、どちらも1年間の所得税を精算する手続きですが、手続きする人と対象範囲が大きく異なります。年末調整は派遣会社などの勤務先が行い、主に給与所得を精算します。
一方、確定申告は本人が行い、給与以外の所得や年末調整では扱えない控除も申告できます。
項目 | 年末調整 | 確定申告 |
|---|---|---|
手続きする人 | 勤務先(派遣会社) | 納税者本人 |
対象範囲 | 主に給与所得 | 1年分の所得 |
医療費控除など | 対象外 | 申告できる |
主な提出先 | 勤務先 | 税務署 |
上表のとおり、年末調整で完結しない控除を使いたい場合は、確定申告が選択肢になります。
申告不要でも還付を受けられるケース
確定申告の義務がない場合でも、申告によって払いすぎた所得税が戻ることがあり、これを還付申告といいます。たとえば、年の途中で派遣を辞めて年末調整を受けていない人、医療費控除を使いたい人、ふるさと納税でワンストップ特例を使っていない人などが該当します。
還付申告は通常の確定申告期間を待たずに提出でき、対象年の翌年1月1日から5年間申告できるため、必要書類がそろった時点で早めに手続きすると安心です。
扶養内で働く場合の確認点
扶養内で働きたい派遣社員は、所得税と社会保険の基準を分けて確認する必要があります。令和7年分からは、本人に所得税がかからない給与収入の目安が、従来の103万円から160万円へ引き上げられました。
扶養控除や配偶者控除の対象になる給与収入の目安も123万円以下に変更になっています。ただし、社会保険の扶養や加入条件は税金とは別の制度のため、130万円の扶養基準や短時間労働者の加入要件もあわせて確認しておきましょう。
2.派遣社員で確定申告が必要なケース
この章では、派遣社員でも自分で確定申告が必要になる代表的なケースを、状況ごとに整理して解説します。
年末調整を受けていない場合
年末調整を受けていない場合は、自分で確定申告が必要になることがあります。年末調整は原則として、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人が対象です。
そのため、年の途中で派遣の仕事を辞め、年末まで再就職していない場合は、年末調整を受けられないことがあります。
令和7年分は基礎控除や給与所得控除の見直しが反映されており、年末調整を受けていない人は確定申告をすることで改正後の控除が適用され、源泉徴収された所得税が戻る可能性があります。
複数の派遣会社で働いた場合
複数の派遣会社で働いた場合は、働き方によって確定申告の提出有無が変わります。年の途中で派遣会社を変えた場合は、前職の源泉徴収票を今の派遣会社へ提出すれば、前職分を含めて年末調整できることがあります。
一方、同時に複数の勤務先で働いている場合は、主な勤務先以外の給与は年末調整されないのが一般的で、年末調整されていない給与収入などが20万円を超えると確定申告が必要になります。
副業所得が20万円を超える場合
派遣の給与とは別に副業所得があり、その金額が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。フリーランスや物販などの副業では、売上から経費を差し引いた金額が所得になります。
副業がアルバイトなどの給与の場合は、年末調整されていない給与収入と、給与・退職所得以外の所得を合計して判断します。なお、20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。
医療費控除や住宅ローン控除を使う場合
医療費控除や住宅ローン控除の初年度は、年末調整では手続きできないため確定申告が必要です。医療費控除は、自分や生計を同じくする家族の医療費が一定額を超えた場合に使えます。
住宅ローン控除は入居した最初の年だけ確定申告が必要で、2年目以降は会社の年末調整で手続きできます。ふるさと納税でワンストップ特例を使っていない場合も、確定申告で寄附金控除を申告します。
日雇い派遣・単発派遣の収入がある場合
日雇い派遣や単発派遣の収入も、雇用契約に基づく給与であれば給与所得にあたります。短期の仕事では年末調整されないことが多く、源泉徴収されたまま税金が精算されていない場合があります。
ほかに主な給与があり、年末調整されていない給与収入と給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。複数社で働いた場合は、すべての源泉徴収票を集めて確認しましょう。
3.派遣社員の確定申告に必要な書類
この章では、派遣社員が確定申告をするときに必要な書類を、源泉徴収票や本人確認書類、控除書類に分けて解説します。
派遣会社から受け取る源泉徴収票
確定申告でまず確認したい書類が、派遣会社から受け取る源泉徴収票です。
源泉徴収票には、1年間の給与額や源泉徴収された所得税額が記載されており、複数の派遣会社で働いた人はすべての会社の分をそろえる必要があります。
所得税の確定申告では給与所得の源泉徴収票の添付は不要ですが、申告書への入力には使うため、申告前に給与額や源泉徴収税額に漏れがないか確認しておきましょう。
マイナンバーカードなどの本人確認書類
確定申告では、マイナンバーと本人確認が必要です。
マイナンバーカードがあれば、番号確認と本人確認を1枚で行え、e-Taxで申告する場合も対応スマートフォンがあると手続きしやすくなります。
マイナンバーカードがない場合は、マイナンバーが分かる書類と、運転免許証などの身元確認書類を用意します。還付を受ける場合は本人名義の口座情報も必要です。なお、ID・パスワード方式は令和7年10月1日から新規発行が停止されています。
控除申請に使う証明書や明細書
医療費控除や寄附金控除などを使う場合は、控除ごとに必要書類を用意します。
年末調整で済ませた控除を重ねて申告する必要はなく、年末調整では扱えなかった控除を申告するのが基本です。
医療費控除:
医療費控除の明細書
住宅ローン控除(初年度):
残高証明書、登記事項証明書、売買契約書など
寄附金控除:
寄附金受領証明書
生命保険料・地震保険料控除:
保険会社が発行する控除証明書
医療費控除を受ける場合、医療費の領収書は提出せず、自宅で5年間保管します。マイナポータル連携を使うと、対応している控除証明書の情報を自動入力できるので便利です。
源泉徴収票が届かない場合の対処法
派遣会社から源泉徴収票が届かない場合は、まず派遣会社へ発行を依頼しましょう。源泉徴収票は給与の支払者に交付義務があり、中途退職の場合は退職後1か月以内に発行されるのが原則です。
依頼しても交付されない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出でき、給与明細が残っていれば相談時の確認資料になります。期限が近い場合は、早めに税務署へ相談しましょう。
4.派遣社員が自分で確定申告する流れ
この章では、派遣社員が自分で確定申告をする手順を、時期の確認から提出後の確認まで順番に解説します。
手順1.確定申告の時期を確認する
確定申告は、申告する所得の翌年2月16日から3月15日までが原則です。
令和7年分の所得税の確定申告期限は、令和8年3月16日(月)でした。
期限を過ぎている場合でも、必要な人は期限後申告として手続きできます。一方、還付申告は通常の確定申告期間に限られず、対象年の翌年1月1日から5年間提出できるため、納めすぎた税金を取り戻したい場合は期限後でも申告できるか確認しましょう。
手順2.確定申告書等作成コーナーで入力する
申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成できます。画面の案内に沿って入力すると税額が自動で計算されるため、手書きよりもミスを減らしやすいです。
源泉徴収票の金額を入力し、使いたい控除を選んで必要な情報を入れます。マイナポータルと連携すれば、医療費や保険料、ふるさと納税などの情報を自動入力できる場合があり、令和7年分からは特定親族特別控除も創設されています。
手順3.e-Tax・郵送・税務署で提出する
作成した申告書は、e-Tax、郵送、税務署窓口のいずれかで提出します。
自宅で手続きを済ませたい場合はe-Taxが便利で、相談しながら進めたい場合は税務署や確定申告会場を利用します。
提出方法 | 主な特徴 |
|---|---|
e-Tax | 自宅から送信できる。添付省略や早い還付が利点 |
郵送 | 管轄税務署へ送付する。通信日付印の日付が提出日になる |
窓口 | 会場で提出・相談できる。混雑しやすいため事前確認が必要 |
提出方法ごとに準備や注意点が異なるため、郵送の場合は提出先の税務署や必要書類を事前に確認しておきましょう。
手順4.還付金の受取や納税を確認する
申告後は、還付金の入金や納税の状況を確認します。還付がある場合は、申告書に記載した本人名義の口座へ振り込まれ、目安としてe-Taxは3週間程度、書面提出は1か月から1か月半程度かかります。
納税がある場合は期限までに納付が必要で、納付方法には振替納税、ネットバンキング、クレジットカード、コンビニ納付などがあります。期限後申告の場合は申告書を提出した日が納期限になるため、早めに納付することをおすすめします。
5.派遣で確定申告していないとどうなる?
この章では、確定申告が必要なのにしていない場合の影響と、期限を過ぎたときの対応を解説します。
追加で税金がかかる場合
確定申告と納税が必要なのに手続きをしていない場合、本来の税額に加えて、無申告加算税や延滞税がかかることがあります。無申告加算税の割合は、期限後申告の時期や税務署の調査状況によって変わります。
税務署から指摘される前に自分で申告すれば負担を抑えられる場合があり、納税が遅れるほど延滞税も増えるため、申告漏れに気づいた時点で早めに手続きすることが大切です。
住民税や所得証明に影響する場合
確定申告をしないと、住民税や所得証明にも影響することがあります。確定申告の内容は市区町村へ共有され、住民税の計算や所得証明書、課税証明書の発行に使われます。
申告がないと正しい所得が確認できず、保育園の申請、児童手当、公営住宅の入居審査、ローン審査などで必要な書類を出せないことがあります。
確定申告をすれば住民税の申告は原則不要ですが、確定申告も年末調整もしていない場合は、自治体への申告が必要になることがありますので念頭に置いておきましょう。
期限を過ぎてから申告する流れ
申告期限を過ぎても、期限後申告として手続きでき、基本的な流れは通常の確定申告と同じです。確定申告書等作成コーナーなどで申告書を作成し、税務署へ提出しましょう。
納税がある場合は申告書を提出した日が納期限になるため、延滞税を増やさないためにも申告とあわせて早めに納付しましょう。還付申告であれば、対象年の翌年1月1日から5年間提出できます。
不安なときの確認先
確定申告が必要か迷う場合は、税務署や国税庁の相談窓口で確認できます。
申告書の作成方法は、確定申告書等作成コーナーのヘルプやチャットボット、e-Tax・作成コーナーヘルプデスクでも確認できます。
副業の所得計算が複雑な場合や、複数の収入がある場合は、税理士に相談する方法もあります。派遣会社は税務の代行はできませんが、源泉徴収票の発行や年末調整の有無は確認できるため、状況に応じて相談先を使い分けると良いでしょう。
6.まとめ
派遣社員は派遣会社が年末調整を行うため、多くの人は確定申告が不要です。
ただし、年末調整を受けていない、複数の会社で働いた、副業所得が20万円を超える、医療費控除や住宅ローン控除を使うといった場合は、自分で申告すると払いすぎた税金が戻ることがあります。
申告が必要なのにしないままだと、加算税や延滞税に加え、住民税や所得証明にも影響が出かねません。まずは源泉徴収票を手元に、自分が申告の対象かどうかを確認することから始めましょう。
判断に迷うときは、確定申告書等作成コーナーや税務署の相談窓口を使うと、初めてでも落ち着いて進められます。
働き方が多様になるなかで、派遣社員でも税金の知識を身につけておくことは、自分の収入を正しく管理し、損をしないための大切な備えになります。この機会に確定申告の仕組みを理解し、必要な手続きを安心して進められるようにしておきましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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